こんにちは、わたしです。
西巷説百物語を読了したわけですが
その一つの物語である「鍛治が嬶」についてのちょっとしたお話です。
「鍛治が嬶」、昔話というか、伝説というか、御伽噺というか。そのようなものですが。
西巷説で出て来る物語とは少し違うのですが、こんなお話です。
とある飛脚が道を急いでいた。しかし日が暮れてしまう。そこは狼の出る場所だったので、飛脚は襲われないように木上に登って夜を明かすことにした。
夜になると、案の定狼は現れた。狼は十匹やそこらではなく、数え切れないほど集まってきた。
木の上までは登ってくるまいぞと思っていたがしかし、驚いたことに狼は互いを肩車するようにして、木にハシゴをかけたのだ。そのハシゴを大神が一匹ずつ登ってくるのを、飛脚は食われてたまるかと脇差で切っては落とし、切っては落とし身を守った。
すると
「かじがうばを呼んでこい!」
と声がして、狼の襲来が止んだ。
しばらくして巨大な狼がやってきた。それがかじがうばとやらなのだろう。かじがうばは狼のハシゴを登って飛脚に襲いかかろうとした。
しかし飛脚はこれもまた切った。かじがうばは転がり落ち、狼達はちりぢりになって逃げた。
夜が明け、飛脚は木からおりると、地面に血の痕を見つけた。恐らくあの化け物狼の血であろう。
血の痕を辿ると、一軒の鍛冶屋の前で途切れていた。
そこで飛脚は家の戸を叩き、出て来た主に問うた。
「この家に婆はおるか」
「年老いた母がおります」
母は怪我をして寝ていると言う。飛脚は有無を言わさず鍛冶屋に乗り込み、寝ている老婆を叩き切った。
すると死体は大きな狼に変じた。あちゃこちゃ抜けていますが筋はだいたいこんなもんです。
こうして飛脚は妖怪狼を退治したわけです。
一体いつから狼が鍛冶屋の母親になりかわっていたのか、それとも最初から、母親は狼だったのか。葛の葉狐のように。
それは解かりません。
しかし、飛脚が来るまで、鍛冶屋一家は平和に暮らしていたのです。
飛脚がしたことは余計なお世話だったのではないのか?
そこがこのお話の怖くて不気味なところだと思いました。
化け物を退治したけれど、事件を解決したわけではなく、それどころか、謎を生んだ。
何が残ったんだろう?
多分喪失が残ったのだ。
そしてきっと永久に解の与えられない疑問が生まれたのだ。
うちの母ちゃんいつから妖怪だったの?
後味の悪い話はいいですねえ。
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