先日飛行機に乗る機会がありました。
過去に何度も乗ったことはありますが、大抵空には雲が多く、飛行機はその上を飛んでいるのでした。
窓から外を眺めてみても、見えるのは白い雲海と突き刺すように青い空ばかり。
ので、そうそう景色を眺めて過ごすということはなく、大体落語を聞いているか、雑誌を読んでいるかで時間を潰します。
ですが、今回は違っておりました。
雲が無いのです。
晴れていたのです。
まず眼下には、と言いましても斜め下なのですが、東京のごちゃごちゃとした、模型のような四角い凹凸が見えていました。
やがてそれが、突然緑色の、しわだらけのベルベット生地みたいな様子に様変わりしました。
なんじゃありゃ、とわたしは声に出してしまっていたかも知れません。
勿論それは山々の稜線でした。
嶺の凸面と、谷の凹面が微妙に間延びした感じで繰り返し繰り返し現れます。
空から見下ろしてみた方が、大地の広さというのは実感するものであるようです。
日本は狭いなあと、家から一歩出たらいい方のわたしが常から思っているのは実際滑稽な有様であります(´∀`)
日本は狭くなどありません。
広いです。
でかいです。
なんじゃあの山だらけの地面……。
どこまで飛んでも山、山、山。
人跡も見つけられましたが、映画もののけ姫のオープニング、アシタカ旅立ちのシーンみたいな深山渓谷がびっくりする程残されていたのです。
ビル群のすぐ隣に。
あまりにもアンバランスだったのでぽかんと眺めていたのですが、続いてもっと仰天の風景が展開されました。
富士山です。
富士山です。
富士山です。
大事なことなので三度書きました。
富士山です。
極め付けにもう一度です。
富士山の上というのは気流が乱れているらしく飛行機は飛ばないらしいのですが、お陰でその姿を上から下まで視界に納めることがかないました。
でかい。
なんと言いますか、でかい。
おかしい。
周りとのスケールがおかしい。
でかい。
きっかりある部分から、茶味のきいた暗緑色に見える、例えるなら栗と抹茶とあんこのお菓子みたいな色をした山肌が真っ白に変わります。
そこの境目がどうやら八合目らしく、じっと眺めていると、五合目にある駐車場らしき場所も見つかりました。
富士山のてっぺんは、砂場にさらさらと築いた円錐山の山頂を、幼児が指で圧し潰したみたいにへっこんでいました。
伊勢物語にその姿を「しほじり」のようだと描写されていた富士山は、平安の頃にはてっぺんまで完璧な円錐形だったのです。
噴火のせいで頭頂部が吹っ飛んでしまって今はあの姿。
それでも充分とんがって見えました。
あんなに遠くて近くに富士山の姿をはっきりとこの目に映したのは初めてだったのでわたしは大興奮してしまいました。同乗のお客様にはご迷惑をおかけしておりましたかもしれませんごめんなさい。
思っていたよりも日本は山だらけでしかも深いようです。
しかしそれでもやっぱり緑地面積ががが、とかなんとかと、十年も前から言われているので、わたしの目には豊かに見えた大地も実際はごっそり痩せ衰えているのでしょう。
とにかく富士山を見ました。富士山すげえ。
あれが噴火したら確かに一たまりもないだろうなあ。